著者:関 勝寿
公開日:2022年6月21日 - 最終更新日:2022年7月27日
キーワード: environment science

オフィスビルのように強制的に換気している環境ではなく、自宅内の狭い部屋で窓を閉めてエアコンをつけている場合には、室内にいる人間の呼吸によってCO2濃度がかなりの速度で上昇する。建築物環境衛生環境基準では二酸化炭素濃度の基準を1000ppm以下と定められているが、換気をしなければ比較的短い時間でこの値を上回る。そのため、適宜換気をすることが推奨される。このページでは、CO2濃度上昇速度を計算・検証し、換気方法について考察する。

CO2濃度上昇速度

呼吸で大気中の二酸化炭素が増加する?に「男女の平均呼吸率(平均的な生活行動をした場合に一日に呼吸する空気の量)は約19m3/dayと推定されています。CO2 1m3 の重さは約1.8kgで、CO2濃度の平均値は3%ですから、人が一日に吐き出すCO2量は約1kgとなります。」と書かれている。この推定値によって1時間に吐き出すCO2量を計算すると、

19 [m3/day] × 1.8 [kg/m3] × 0.03 × 1000 [g/kg] / 44 [g/mol] / 24 [hr/day] = 0.97 [mol/hr]

となる。部屋の体積を V m3 として、1人の人間がその中で 0.97 [mol/hr] のCO2 を発生し、それが外部には排出されていないとすると、1時間あたりの CO2 濃度上昇量は、室温25°C、標準気圧における気体のモル体積は 8.3145 J / K mol × 298.15 K / 101325 Pa = 0.0245 m3 / mol であることから

0.97 [mol/hr] / V [m3] × 0.0245 [m3 / mol] = 0.024 / V [/hr]

となる。すなわち、V=24 m3 のとき、1時間あたり0.1% = 1000 ppmのCO2濃度上昇をもたらすこととなる。

たとえば、2.6m×3.5mの6畳の部屋で天井高が2.6mあればV=24 m3となり、換気がまったくなければ1人の人間が1時間いるだけで1000ppmのCO2濃度上昇となる。この6畳間で1人当たり1000 ppm/hrを基準に、部屋の中にいる人数をかけて、部屋の体積が6畳間の何倍あるかということで割ることで、CO2測定装置がない場合でもおおまかな値を推測する目安となるであろう。

部屋の中でCO2濃度上昇を測定すると、部屋を締め切っていても多少の空気の交換はあることから、計算値よりはCO2濃度上昇速度は若干小さかった。おおまかな上限値の見積もりとしては、この計算結果は有効であることが確認できた。

定期的な換気

エアコンをつけて部屋を締め切っている場合には、一般的に推奨されているように、定期的に換気をすることで室内空気のCO2濃度を一定に保つことが推奨されている。室内のCO2濃度を1000ppm以下に保つために、次のようなサイクルを考える。

  1. CO2濃度が1000ppmに達するまで部屋を閉めきる。
  2. CO2濃度が600ppmに下がるまで換気する。1に戻る。

上記の計算による6畳間で1時間に1000ppm上昇する部屋を考えると、1においてCO2濃度が600ppmから1000ppmまで上昇する時間は24分であるが、実際には完全な密閉空間でなければそれよりも時間が長くなるので30分〜1時間程度となる。1000ppmから600ppmまで下がるのに要する時間は、換気速度による。空気の出入り口2箇所を確保して大きく解放し、大きな風の流れを作ることができれば、5〜10分で十分に換気できる。換気の目安として30分〜1時間に一度5〜10分換気する、ということが言われるのは、おおよそこのような計算であろう。

常時換気方式

24時間換気システムを作動させることにより、CO2濃度上昇速度を抑えることができる。ただし、その換気速度は2時間で部屋の空気が入れ替わる程度の換気量となっていて、定期的な窓開け換気も併用することが推奨されている。24時間換気システム作動の有無に関わらず、常時窓をわずかに開けて換気することでCO2濃度の上昇を抑えることができる。エアコンを使いながら常時窓を開けて換気するときには、エアコンの効率を考えると、窓の開放は必要最小限としたい。どの程度解放すれば良いのであろうか。

部屋の体積V、呼吸によるCO2の発生速度d、換気による空気の交換速度e、外気のCO2濃度aが一定であるとして、室内のある箇所におけるCO2濃度の変化を測定すると、空気の流れが一定であれば、やがて平衡状態に達する。実際には、それぞれのパラメータは変化し、空気の流れも一定ではないため、完全な平衡状態とはならず、ある範囲内で上下することとなるので、その平均的な値を平衡状態の値とする。初期状態をCO2濃度が低い状態から始めたときとCO2濃度が高い状態から始めた時の両方を確認することで、より確実に平衡状態であるかどうかを確認することができる。

実際にこの方式を試してみたところ、空気の出入り口が離れた場所で2箇所確保されていれば、たとえば窓をわずかに開けるだけでも、十分に低いCO2濃度を保つことが可能である。この方式でたとえば800ppm程度の濃度に保つようにすれば、頻繁に窓の開け閉めをすることなく、また過剰にエアコンに負荷をかけずに、快適な室内の空気を保つことが可能となる。市販のCO2濃度測定器で確認しながら、快適な常時換気方式を見つけると良いであろう。ただし、まだ冬は未検証である。冬は室内外の気温差(すなわち空気の密度差)が大きく窓を解放した場合の換気速度が夏よりも大きくなるため、常時換気方式はあまり有効に働かない(部屋を冷やしすぎてしまう)可能性がある。

なお、室内で運動をする場合にはCO2発生量が多くなるため、運動後に、あるいは運動中に定期的にしっかりと換気してCO2濃度を下げると良い。

参考サイト