著者:関 勝寿
公開日:2023年1月3日
キーワード: medical

血糖値を連続測定するフリースタイルリブレを使った経験について記す。内容は無保証です。

リブレとは

血糖値は血液中のグルコース濃度であり、通常は医療機関で採血して測定するか、自ら指先に針を刺して(穿刺)微量の血液を採取して測定する。Abbott社が製造するFreeStyleリブレは、上腕部に小さな針(フィラメント)がついたセンサーを装着して、血糖値を連続的に測定する。スマホでセンサーに集積された血糖値のデータを読み取り、その場で上の画像のような血糖値変化のグラフを確認することができる。センサーは14日間装着し続けて、その間針の差し替えや採血をすることなく血糖値を連続的に測定できるので、血糖値の変化を知るには測定毎に針を刺す穿刺と比べて手軽である。

ここで、リブレは血管まで針を刺しているのではなく、皮膚直下の浅いところにまでしか刺していない。また、この記事によれば針は打ち込んだ後すぐに元に戻って電極だけが体内に残るため、センサーを装着したまま生活してもそれほどの違和感はない。そして、細胞と細胞との間に存在する液体(間質液)のグルコース濃度を測定している。そのため、リブレが測定しているのは血糖値すなわち血液中のグルコース濃度ではないが、このページで説明されているように、リブレが測定する間質液中のグルコース濃度は血糖値との間に相関がある。リブレでは上の画像のように「グルコース値」と表記されるが、この記事ではわかりやすく「血糖値」と表記する。

血糖値測定の流れ

リブレにはバージョン2と3もあるようだが、日本で現在医療機器として承認されて販売されているのは最初のバージョンであり、このページでは最初のバージョンについて記す。まず、リブレはインスリン療法を行っている患者には保険適用となっている。保険適用とならない場合にも、センサーを全額自己負担で購入して測定をすることは可能である。センサーはアマゾン楽天で購入できる。センサーを読み取るためのリブレ専用のリーダーがセットで販売されているものもあるが、NFC搭載のスマホであれば、iPhone、アンドロイドともにリーダーとして使用できるため、専用リーダーの購入は必須ではない。ここでは、スマホを使って読み取る方法を中心に記す。

スマホにはFreeStyleリブレLinkというアプリを入れる。最初にリブレViewのアカウント登録が必要となる。センサーの装着方法はこのページを参照。装着後にセンサーをスマホで起動する。もしリーダーを持っている場合にはリーダーで起動する。リーダーで起動した後にスマホで読み取ることは可能だが、スマホで起動した後にリーダーで読み取ることはできないためである。スマホのアプリでセンサーを起動する準備ができたら、スマホのNFCチップ部位をセンサーにかざすことでセンサーが起動する。起動後60分後から血糖値の読み取りが可能となる。それから14日間、センサーは血糖値の測定を続ける。その測定された値をスマホで読み取ることができる。14日後に血糖値の測定が終了したら、センサーを取り外して廃棄する。

センサーは1分間に一度自動的に血糖値を測定し、15分ごとに過去15分間の代表的な血糖値をセンサー内部のメモリに保存する。メモリには15分おきの血糖値が8時間分だけ保存される。8時間を超えると、古いデータから削除される。スマホで血糖値を読み取ると、その時点における血糖値が表示されるとともに、メモリ内部に保存されている血糖値がスマホのアプリに読み取られる。したがって、8時間以内の間隔で読み取りを続ければ、切れ目なく15分ごとの血糖値の値を読み取ることができる。読み取られた値は、アプリで連続的なグラフとして表示される。アプリにはデータが90日保存され、蓄積された血糖値のデータのトレンドを見る以下のような日内パターン(AGP)などを表示できる。

測定されたデータはリブレViewのアカウントによってクラウドに保存され、パソコンからリブレViewにログインすれば、AGPなどのレポートをPDFファイルとして閲覧、ダウンロードできる。測定値をcsvでダウンロードすることも可能である。レポートでは、たとえば以下のような「食事時間パターン」が示され、食後どの程度の時間で血糖値が上昇するのかの傾向を知ることができる。ここで、食事時間は食事をするときにその都度スマホから入力してアプリに教える必要がある。また、リブレViewには医療機関とデータを共有する機能があり、私は受診している糖尿病専門医にデータを共有し、医師に直接血糖値の変化を確認してもらっている。

糖尿病専門医大坂貴史先生のYouTubeチャンネルくろまめちゃんねるには、糖尿病に関する解説動画の中で、リブレをはじめとするいくつかの持続血糖測定器(CGM)についての解説がされている。

リブレを使ってみて

リブレをしばらく使って感じたことや考えたことを列記する。

未経験情報

リブレはスマホあるいはリーダーで読み取りをしないとデータが読み込まれないため、低血糖や高血糖のイベントが生じた時に、スマホでの読み込みをせずとも迅速にアラートを受け取りたい、というような場合には、一工夫が必要となる。たとえば、MiaoMiaoというトランスミッターを使って定期的にブルートゥースでスマホやスマートウォッチにデータを飛ばす、という方法があるようだ。なお、MiaoMiaoを使う場合にはTomatoなどの互換性のあるアプリを使う必要があり、リブレViewにデータを送るためには、別途リブレLinkのアプリで8時間毎に読み込む必要があるのではないかと思われる。今のところはそれほどの必要性を感じていないのでトランスミッターは使用していない。

また、米国サイトのリブレ2の説明によれば、リブレ2では設定した低血糖、高血糖の値に達するとブルートゥースで20フィート(6メートル)以内にあるスマホにアラートを送る機能がある。ただし、FAQに「アプリバージョン2.5.3のメニュー画面表示される「アラート」機能は、現在国内ではご利用頂けません。(2021年7月現在)」と記載されているのは、リブレ2が日本でまだ医療機器として承認されていないためであると推測される。将来的に、リブレ2または3が日本で承認されて今のリブレと同じ程度の価格で購入できるようになったときには試してみようと思う。