Docker 上で Codex・Claude Code・Gemini を統一操作する agent コマンド
著者:関 勝寿
公開日:2026年9月20日 - 最終更新日:2026年10月10日 - PDFで表示
キーワード:
python
ai
agent は、Docker 上で Codex、Claude Code、Gemini / Antigravity を同じ操作体系で実行するための単一コマンドです。コンテナの作成・再利用・削除やエージェントごとの起動手順を統一するとともに、AI エージェントのネットワーク能力を制限します。コンテナを使うことで、ホスト環境を汚さずに実行環境を分離できます。作業ディレクトリだけをコンテナへ共有し、エージェントごとの設定・認証状態はホスト側に保持します。プロジェクト固有のパスや、特定ホストだけの設定には依存しません。
Codex (cx) と Claude Code (cl) は既定で専用の Squid proxy を経由し、許可リストにない宛先への HTTPS 接続を拒否します。これにより、エージェントやコンテナ内のプログラムが任意の宛先へ直接通信、ダウンロード、アップロード、外部 API の実行などを行うことを防ぎます。Web 検索など提供者ホスト型の機能は別の限定された能力として扱われ、コンテナからの任意通信を許すものではありません。--direct-egress を指定すると、この制限を外して Docker の通常の外部ネットワークへ直接接続できます。
インストールとセットアップ
前提条件
- Docker: Docker がインストールされており、Docker デーモンが動作していること(現在のユーザーで
dockerコマンドが実行できる権限があること)。 - Python 3: ホスト環境に Python 3(Python 3.8 以上推奨)がインストールされていること。
1. スクリプトのダウンロード
curl または wget を使用して、agent スクリプトをダウンロードします。
# curl を使用する場合
curl -fsSL https://sekika.github.io/file/agent/agent -o agent
# または wget を使用する場合
wget https://sekika.github.io/file/agent/agent
2. 実行権限の付与
ダウンロードした agent ファイルに実行権限を付与します。
chmod +x agent
3. PATH の通ったディレクトリへの配置
ターミナルからいつでも agent コマンドとして呼び出せるよう、PATH の通ったディレクトリに配置します。たとえば
sudo mv agent /usr/local/bin/
4. Dockerfile のダウンロード
agent は各エージェントを実行する Docker コンテナ環境を構築するために Dockerfile を使用します。プロジェクトディレクトリや作業ディレクトリなど、任意の場所に Dockerfile をダウンロードします。
# curl を使用する場合
curl -fsSL https://sekika.github.io/file/agent/Dockerfile -o Dockerfile
# または wget を使用する場合
wget https://sekika.github.io/file/agent/Dockerfile
配布する Dockerfile は、既定では Debian Trixie の slim イメージを使用します。
# https://hub.docker.com/_/debian
FROM debian:trixie-slim
Debian の別のリリースを使用する場合は、FROM 行のイメージタグを使用したいリリースに合わせて適宜書き換えてください。利用可能なタグは Docker Hub の Debian 公式イメージで確認できます。
Codex / Claude 用の Squid proxy イメージも、--dockerfile で指定した Dockerfile の最初の FROM 行を読み取り、同じベースイメージから自動的に構築します。そのため、本体の Dockerfile で Debian のリリースを変更した場合、proxy 用 Dockerfile を別途修正する必要はありません。proxy イメージに記録されたベースイメージと現在の FROM が異なる場合は、proxy イメージを自動的に再ビルドします。
5. コンテナイメージのビルド
ダウンロードした Dockerfile をもとに、agent build コマンドで Docker イメージ(既定値: agent:1.0)をビルドします。
# カレントディレクトリに Dockerfile がある場合
agent build
# Dockerfile を別の場所に配置している場合
agent build --dockerfile /path/to/Dockerfile
通常の build では Docker のキャッシュが利用されます。OS のベースイメージから完全に作り直したい場合は、agent rebuild を使用します。rebuild では --no-cache --pull を付けて、キャッシュを破棄して最新のベースイメージから再構築します。
agent rebuild
既存イメージをベースとしてパッケージと各 CLI だけを最新化したい場合は、agent update を使用します。パッケージに対して apt-get upgrade を実行し、Codex、Claude Code、Gemini CLI を @latest へ更新するとともに、Antigravity CLI も更新したイメージを作成します。更新用の Dockerfile は別ファイルとして作成せず、標準入力から Docker に渡します。
agent update
対象となるイメージがまだ存在しない場合、agent update は通常の build と同じ方法で Dockerfile からイメージを作成します。
6. 動作確認
インストールおよびイメージの作成が正常に完了したか確認します。
# ヘルプの表示確認
agent --help
# 作成されたイメージの確認
agent images
ヘルプやイメージ一覧が表示されればセットアップは完了です。
基本的な使い方
引数なし、または run を指定すると、選択したエージェントをコンテナ内で実行します。
# Codex(既定値)
agent
agent --agent codex
# Claude Code / Gemini
agent --agent claude
agent --agent gemini
# Codex / Claude で Squid を使わず直接外部接続
agent --agent codex --direct-egress
agent --agent claude --direct-egress
# 短縮名も使用可能
agent --agent cx
agent --agent cl
agent --agent gm
# モデル、推論強度、作業ディレクトリを指定
agent -m gpt-5 --effort high
agent --dir /path/to/project
# 起動前にイメージ内のパッケージと CLI を更新
agent -u
agent -u は、エージェントを起動する前に agent update と同じ方法で既存イメージを更新し、更新したイメージからコンテナを作り直してエージェントを起動します。
指定した作業ディレクトリは、コンテナ内の --workspace で指定した場所へマウントされます。選択したエージェントに応じて、必要な設定・認証状態もコンテナへマウントされます。
--dir(または -d)で作業ディレクトリを指定しない場合は、agent コマンドを実行した時点のホスト側のカレントディレクトリが作業ディレクトリになります。そのディレクトリがコンテナ内の --workspace(既定値は /workspace)へマウントされます。
gemini(短縮名 gm)を選択した場合、コンテナ内では Antigravity CLI の agy をエントリポイントとして使用します。
Codex / Claude のネットワーク許可リスト
この制御の目的は、AI エージェントとコンテナ内で実行されるプログラムに、任意のネットワーク操作をさせないことです。任意の宛先へ通信できると、意図しない依存プログラムやマルウェアの取得、作業ディレクトリや認証情報の外部への持ち出し、外部 API を通じたデータ変更・公開・課金操作、外部からの指示待ち通信などにつながり得ます。許可リストにない宛先への直接通信をコンテナのネットワーク境界で止めることで、こうした操作を行える範囲を必要なサービスに限定します。
Codex と Claude Code は、既定では専用の Squid proxy を経由して外部通信します。エージェント用コンテナは Docker の internal network のみに接続し、proxy コンテナだけが internal network と外部接続用 network の両方に接続します。このため、エージェント側で proxy 環境変数を削除しても、通常の外部 IP 接続へ直接切り替えることはできません。エージェントは、許可したサービスに対する通常の利用に必要な通信だけを行えます。
この制御は「AI に外部 Web の情報を一切読ませない」ためのものではありません。Codex の Web search、Claude Code の WebSearch / WebFetch のような提供者ホスト型の機能が有効な場合、エージェントはその機能に検索・取得を依頼できます。実際の Web 取得は OpenAI または Anthropic 側で実行され、結果だけがエージェントへ返ります。これはコンテナからの直接通信とは別の、検索・閲覧に限定された能力です。
したがって、この許可リストはコンテナ発の egress を制御する境界です。提供者ホスト型ツール、MCP サーバー、接続済みアプリなど、それぞれ別の実行場所・認可経路を持つ機能の通信まで一律に制御するものではありません。それらを使わせない必要がある場合は、各機能を別途無効化または設定で制限してください。
許可ドメインはホスト側の次の3ファイルで管理します。
~/.config/agent/allowed_domains_common.txt
~/.config/agent/allowed_domains_codex.txt
~/.config/agent/allowed_domains_claude.txt
allowed_domains_common.txt は Codex と Claude Code の両方に追加して使用する共通リストです。初回は空のファイルを作成します。エージェント別ファイルには初回作成時に次の既定値を登録します。
Codex:
api.openai.com
auth.openai.com
chatgpt.com
Claude Code:
api.anthropic.com
statsig.anthropic.com
sentry.io
起動時には allowed_domains_common.txt と、選択したエージェントの allowed_domains_<agent>.txt を結合した有効な許可リストを生成し、それを Squid へ渡します。共通リストとエージェント別リストのどちらに同じドメインがあっても重複は除去されます。
現在選択しているエージェントの有効な許可リストは domains で確認できます。allow / deny は共通リストではなく、そのエージェント固有のファイルを変更します。
# Codex の有効な許可リストを表示
agent --agent codex domains
# Codex 固有の許可リストへ追加・削除
agent --agent codex allow registry.npmjs.org
agent --agent codex deny registry.npmjs.org
# Claude の有効な許可リストを表示
agent --agent claude domains
# Claude 固有の許可リストへ追加・削除
agent --agent claude allow registry.npmjs.org
agent --agent claude deny registry.npmjs.org
共通で許可したいドメインは ~/.config/agent/allowed_domains_common.txt を直接編集します。次回の Codex / Claude 起動時に、エージェント別リストと合わせて反映されます。
通信が拒否されたときは接続先を確認し、必要なドメインだけ追加します。拒否された接続先を確認するには docker logs agent-egress を使います。コンテナ名を変更した場合は <container>-egress を指定してください。
初回起動時には agent-egress:1.0 proxy イメージを自動ビルドします。proxy 用 Dockerfile と Squid 設定は agent スクリプトに埋め込まれていますが、その FROM には --dockerfile で指定した本体 Dockerfile の最初の FROM 行を使用します。したがって本体のベースイメージを変更すると、必要に応じて proxy イメージも自動的に再ビルドされます。
Squid による制御を使わず、Codex または Claude Code のコンテナを Docker の通常の外部ネットワークへ直接接続する場合は --direct-egress を指定します。
agent --agent codex --direct-egress
agent --agent claude --direct-egress
--direct-egress を指定した場合は Squid proxy と internal network を使用せず、proxy 環境変数も設定しません。Gemini / Antigravity はこの Squid 制御の対象外で、従来どおりホストネットワークを使用します。
この制御はドメイン単位の HTTPS CONNECT を対象にします。許可ドメインへのデータ送信は可能です。また、Docker の名前解決やホスト側の Docker 設定など、proxy ACL の外側にある経路まで含めた完全な情報漏えい防止を保証するものではありません。未信頼コードを扱う場合は許可ドメインを必要最小限にし、作業ディレクトリに秘密情報を置かないでください。
サブコマンド
run(既定): コンテナを準備し、選択した CLI を実行します。後ろの引数は CLI に渡されます。build:--dockerfileで指定した Dockerfile から、--imageのタグでイメージを作成します。Docker のキャッシュを利用し、ビルドコンテキストは--dirです。rebuild:Dockerfileから--no-cache --pullを付けてビルドし、キャッシュを破棄してベースイメージから完全に再作成します。update: エージェントを起動せず、既存イメージをベースとしてパッケージと各 CLI を更新したイメージを作成します。対象イメージが存在しない場合は通常のbuildを行います。start: エージェントを実行せず、コンテナを作成または起動します。stop: 指定コンテナと Codex / Claude 用 egress proxy を停止します。rm: 指定コンテナ、egress proxy と専用ネットワークを削除します。イメージとホスト側設定は削除しません。shell: 指定ユーザーでコンテナ内の Bash を対話的に起動します。exec: コンテナ内で任意のコマンドを実行します。images:docker imagesで Docker イメージを一覧表示します。domains: 選択した Codex / Claude の、common を含む有効な許可ドメインを一覧表示します。allow <domain>/deny <domain>: 選択した Codex / Claude のエージェント別許可リストを変更します。
agent build
agent rebuild
agent update
agent start
agent shell
agent exec -- ls -la
agent stop
agent rm
agent images
agent domains
agent allow registry.npmjs.org
agent deny registry.npmjs.org
agent --agent claude domains
agent --agent claude allow registry.npmjs.org
agent --agent claude deny registry.npmjs.org
exec の -- は agent 自身の引数と、コンテナ内コマンドの引数を区切ります。コマンドを省略するとエラーになります。
build、rebuild、update の違いをまとめると、build は Dockerfile からの通常のビルド、rebuild はキャッシュを破棄して最新のベースイメージから行う完全な再ビルド、update は既存イメージをベースとしてパッケージと CLI を更新するためのビルドです。
オプション
| オプション | 内容 |
| —————- | ———————————————————————————————————– |
| -a, --agent | codex (cx) / claude (cl) / gemini (gm)。 |
| -d, --dir | 作業ディレクトリ。実行時のマウント元とビルドコンテキスト。省略時は agent を実行した時点のホスト側のカレントディレクトリ。 |
| --dockerfile | build / rebuild で使う Dockerfile。既定値は ./Dockerfile。 |
| --image | 使用・作成するイメージ名。既定値は agent:1.0。 |
| --container | コンテナ名。既定値は agent。 |
| --user | コンテナ内の実行ユーザー。既定値は agent。 |
| --workspace | コンテナ内の作業ディレクトリ。既定値は /workspace。 |
| -m, --model | 選択したエージェントに渡すモデル名。 |
| --effort | 推論強度。Codex / Claude は low / medium / high / xhigh、Gemini / Antigravity は low / medium / high。 |
| -u, --update | 起動前に既存イメージをベースとしてパッケージと CLI を更新し、更新したイメージからコンテナを作り直します。 |
| --dry-run | Docker を実行せず、指定された agent コマンドラインを表示して終了します。 |
| --direct-egress | Codex / Claude で Squid proxy を使わず、Docker の通常の外部ネットワークへ直接接続します。既定では Squid proxy を使用します。 |
コマンドラインの値は設定ファイルと組み込み規定値より優先されます。
設定ファイルと自動保存
設定ファイルは ~/.config/agent/agent.ini です。存在しない場合、初回実行時に [agent] の規定値を自動保存します。[models] と [efforts] は必要な場合に追加する任意のセクションです。ホームディレクトリに書き込めない場合は警告を表示し、規定値で処理を続けます。
[agent]
agent = codex
dockerfile = ./Dockerfile
image = agent:1.0
container = agent
user = agent
workspace = /workspace
model =
effort =
[models]
codex = gpt-5.6-terra
claude = claude-opus-5
gemini = gemini-3.8-flash
[efforts]
codex = xhigh
claude = high
gemini = high
コマンドラインで一時的に指定した値は、設定ファイルへ自動的には書き戻しません。継続して使う値を変更する場合は、このファイルを編集してください。
model と effort は全エージェント共通のフォールバックです。エージェントごとに異なる値を使う場合は、[models] と [efforts] に codex、claude、gemini のキーを指定します。短縮名の cx、cl、gm もキーとして使用できます。
モデルは、コマンドラインの -m / --model、[models] のエージェント別設定、[agent] の model の順で優先されます。推論強度も同様に、コマンドラインの --effort、[efforts] のエージェント別設定、[agent] の effort の順で優先されます。
設定・認証状態
エージェントごとに次のホスト側ディレクトリを、対応する CLI の設定ディレクトリとしてコンテナへマウントします。
Codex:
~/.codex -> /home/agent/.codex
Claude Code:
~/.claude -> /home/agent/.claude
Gemini / Antigravity:
~/.gemini -> /home/agent/.gemini
~/.local/share/keyrings -> /home/agent/.local/share/keyrings
認証情報や CLI の設定形式は各 CLI の通常の仕組みに従います。agent は認証情報を変換せず、プロジェクト固有の絶対パスやホスト専用設定を追加しません。
Codex と Gemini / Antigravity については、必要なホスト側ディレクトリが存在しない場合に自動的に作成します。Claude Code の ~/.claude が存在しない場合はエラーとして終了します。
Codex と Claude Code のコンテナでは、既定で Squid proxy と internal network による egress 制御を使用します。--direct-egress を指定した場合はこの制御を使用せず、Docker の通常の外部ネットワークへ直接接続します。
Gemini / Antigravity のコンテナでは、認証処理のためホストネットワークを使用し、keyring もホスト側に保持します。
Docker の前提と既定値
Docker コマンドがインストールされ、Docker デーモンへ接続できる必要があります。利用できない場合は、明確なエラーを表示して終了します。
- Dockerfile:
./Dockerfile - 作業ディレクトリ: 実行時のカレントディレクトリ
- イメージ:
agent:1.0 - コンテナ:
agent - コンテナ内ユーザー:
agent - コンテナ内ワークスペース:
/workspace
指定したイメージが存在しない状態で run、start、shell、exec を実行した場合は、コンテナを作成する前に Dockerfile からイメージを自動的にビルドします。
起動時の共通動作
agent は、コンテナを必要とする操作の開始時に既存コンテナを削除して、指定した作業ディレクトリと認証状態を bind mount したコンテナを作り直します。作成済みコンテナの mount は後から変更できないためです。イメージを更新した場合も、既存コンテナには更新内容が反映されないため、更新したイメージからコンテナを作り直します。
作業ディレクトリは既定で起動時のカレントディレクトリです。-d を指定すると、そのディレクトリをコンテナ内の --workspace で指定した場所(既定値 /workspace)に割り当てます。build と rebuild のビルドコンテキストもこのディレクトリです。
Codex のホスト側設定とログイン状態は ~/.codex、Claude Code は ~/.claude、Gemini / Antigravity は ~/.gemini と keyring をコンテナへマウントします。コンテナを作り直しても、これらの状態は保持されます。
コンテナだけを準備する場合は start、停止する場合は stop、削除する場合は rm を使用します。コンテナ内で対話的に Bash を使う場合は shell、任意のコマンドを実行する場合は exec を使用します。
Codex のコンテナ起動
コンテナ自体を実行境界として使うため、Codex の追加 sandbox は起動時に sandbox_mode=danger-full-access へ上書きします。コンテナ内ではユーザー名前空間を作成できないため、Codex が使う bubblewrap は実行しません。
ホスト側設定をそのままコンテナへ持ち込むと、コンテナ内で利用できない MCP やプラグインが起動することがあります。そのため、node_repl などコンテナ環境で使用しない機能を起動時のオプションで無効化します。また、Codex の通知機能も起動時に無効化します。これらは起動時の上書きであり、ホスト側の ~/.codex/config.toml は変更しません。