著者:関 勝寿
公開日:2015年10月23日 - 最終更新日:2020年10月2日
キーワード: environment

IPCC (Intergovernmental Panel of Climate Change; 気候変動に関する政府間パネル) は、気候変動(地球温暖化)に関する科学的な研究成果を収集、整理して公表している国際的な学術機関である。1988年に世界気象機関 (WMO) と国連環境計画 (UNEP) により設立された。

次の3つの作業部会 (Working Group) に分かれている。

第1作業部会 WG I 科学的知見
第2作業部会 WG II 脆弱性、影響、適応
第3作業部会 WG III 排出抑制と気候変動の緩和

これまでに、以下の報告書が公表された。

年次 報告書 略称
1990年 第1次評価報告書 FAR
1995年 第2次評価報告書 SAR
2001年 第3次評価報告書 TAR
2007年 第4次評価報告書 AR4
2014年 第5次評価報告書 AR5

第5次評価報告書 (AR5) の作業部会ごとの報告書と総合報告書の和訳と解説資料は環境省のページにまとめられている。

このページでは、第1作業部会が作成した報告書「気候変動2013 - 自然科学的根拠」の「政策決定者向け要約 (SPM; Summary for policymakers)」に掲載されている図表をまとめる。なお、図表によく出てくる RCP については、以下の用語集和訳の 代表的濃度経路(Representative Concentration Pathways)を参照。

なお、第6次評価報告書(AR6)は2022年に出版される予定である。

SPM に掲載されている図

AR5のSPM(政策決定者向け要約)に掲載されている図は、Report Graphics: Summary for Policymakers にまとめられている。以下に、図のタイトルを和訳して図をリンクしたものを一覧にする。解説については、上記のSPMの和訳を参照。

図 SPM.1: 1850年から2012年までの世界平均地上気温の偏差(年平均と10年平均)と1901年から2012年までの観測された地上気温の変化 図 SPM.2: 1901年から2010年及び1951年から2010年までの降水量変化の分布図 図 SPM.3: 世界的な気候変動に関する複数の観測指標
図 SPM.4: 地球の炭素循環に関する複数の観測指標(大気中の二酸化炭素、海面の二酸化炭素とpH) 図 SPM.5: 1750年を基準とした2011年における放射強制力の推定値と要因ごとに集計された不確実性 図 SPM.6: 観測及びシミュレーションによって再現された気候変動の比較。すなわち、大陸の地上気温、極地の海氷面積、海洋貯熱量の変化
図 SPM.7: 1950年から2100年までの世界平均地上気温、北半球の9月の海氷面積、世界平均の海面pH変化の複数のモデルによるシミュレーション 図 SPM.8: 21世紀後半における年平均地上気温変化、年平均降水量変化、9月の北半球の海氷面積、海面のpH変化の2つのシナリオによるモデル予測分布図 図 SPM.9: 21世紀中の世界平均海面水位の上昇予測(1986~2005年平均との比較)
図 SPM.10: 世界全体の二酸化炭素の累積総排出量の関数として示した、モデルにより予測される世界平均地上気温の上昇量

SPM に掲載されている表

AR5のSPMには以下の3枚の表が掲載されている。

表 SPM.1: 気象及び気候の極端現象。気象庁による和訳の p.5 参照。

表 SPM.2: 1986~2005年平均を基準とした、21世紀中頃と21世紀末における、世界平均地上気温と世界平均海面水位上昇の変化予測。注釈は省略。

2046~2065年 2081~2100年
シナリオ 平均 可能性が高い予測幅 平均 可能性が高い予測幅
世界平均
地上気温の変化(℃)
RCP2.6 1.0 0.4~1.6 1.0 0.3~1.7
RCP4.5 1.4 0.9~2.0 1.8 1.1~2.6
RCP6.0 1.3 0.8~1.8 2.2 1.4~3.1
RCP8.5 2.0 1.4~2.6 3.7 2.6~4.8
シナリオ 平均 可能性が高い予測幅 平均 可能性が高い予測幅
世界平均
海面水位の上昇(m)
RCP2.6 0.24 0.17~0.32 0.40 0.26~0.55
RCP4.5 0.26 0.19~0.33 0.47 0.32~0.63
RCP6.0 0.25 0.18~0.32 0.48 0.33~0.63
RCP8.5 0.30 0.22~0.38 0.63 0.45~0.82

表SPM.3: CMIP5の地球システムモデルのシミュレーションにより計算された、RCPシナリオの大気中濃度変化に対応する2012年から2100年の期間の累積二酸化炭素排出量。

シナリオ 2012~2100年の累積二酸化炭素排出量(a)
GtC GtCO2
平均 範囲 平均 範囲
RCP2.6 270 140~410 990 510~1505
RCP4.5 780 595~1005 2860 2180~3690
RCP6.0 1060 840~1250 3885 3080~4585
RCP8.5 1685 1415~1910 6180 5185~7005

注釈:
(a) 1 GtC は、炭素換算で1ギガトン(=10 億トン=1000 兆グラム)を表す。二酸化炭素換算では36億6700万トンに相当する。

要約の要約

以下は、SPMの和訳の中に各章の要約として網掛けで記されていることをそのまま列記したものであり、いわば要約の要約である。

要約
B. 気候システムの観測された変化 気候システムの温暖化には疑う余地がなく、また 1950 年代以降、観測された変化の多くは数十年から数千年間にわたり前例のないものである。大気と海洋は温暖化し、雪氷の量は減少し、海面水位は上昇し、温室効果ガス濃度は増加している(図 SPM.1、図 SPM.2、図 SPM.3、図 SPM.4 を参照)。
B.1 大気 地球の表面では、最近 30 年の各 10 年間はいずれも、1850 年以降の各々に先立つどの 10 年間よりも高温でありつづけた(図 SPM.1 を参照)。北半球では、1983~2012 年は過去 1400 年において最も高温の 30 年間であった可能性が高い(中程度の確信度)。
B.2 海洋 海洋の温暖化は気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量において卓越しており、1971 年から2010 年の間に蓄積されたエネルギーの 90%以上を占める(高い確信度)。1971 年から 2010 年において、海洋表層(0~700 m)で水温が上昇したことはほぼ確実であり(図 SPM.3 を参照)、また 1870年代から 1971 年の間に水温が上昇した可能性が高い。
B.3 雪氷圈 過去 20 年にわたり、グリーンランド及び南極の氷床の質量は減少しており、氷河はほぼ世界中で縮小し続けている。また、北極域の海氷及び北半球の春季の積雪面積は減少し続けている(高い確信度)(図SPM.3 を参照)。
B.4 海面水位 19 世紀半ば以降の海面水位の上昇率は、過去 2 千年間の平均的な上昇率より大きかった(高い確信度)。1901 年から 2010 年の期間に、世界平均海面水位は 0.19 [0.17~0.21] m 上昇した(図SPM.3 を参照)。
B.5 炭素とその他の生物地球化学循環 大気中の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素濃度は、少なくとも過去 80 万年間で前例のない水準にまで増加している。 二酸化炭素濃度は、第一に化石燃料からの排出、第二に正味の土地利用変化による排出により、工業化以前より 40%増加した。海洋は排出された人為起源の二酸化炭素の約 30%を吸収し、海洋酸性化を引き起こしている(図 SPM.4 を参照)。
C. 気候変動をもたらす要因 放射強制力の合計は正であり、その結果、気候システムによるエネルギーの吸収をもたらしている。合計放射強制力に最大の寄与をしているのは、1750 年以降の大気中の二酸化炭素濃度の増加である(図SPM.5 を参照)。
D. 気候システム及びその近年の変化についての理解 気候システムに対する人間の影響は明瞭である。これは、大気中の温室効果ガス濃度の増加、正の放射強制力、観測された温度上昇、そして気候システムに関する理解から明白である。
D.1 気候モデルの評価 第 4 次評価報告書以降、気候モデルは改良されている。モデルは、20 世紀半ば以降のより急速な温暖化や、大規模火山噴火直後の寒冷化を含め、観測された地上気温の大陸規模の分布や数十年にわたる変化傾向を再現している(非常に高い確信度)。
D.2 気候モデルの応答の定量化 温度変化、気候フィードバック、及び地球のエネルギー収支の変化に関する観測やモデルによる研究が総合されて、過去及び将来の強制力への応答としての地球温暖化の大きさについての確信度を与えている。
D.3 気候変動の検出と原因特定 気候に対する人為的影響は、大気と海洋の温暖化、世界の水循環の変化、雪氷の減少、世界平均海面水位の上昇、及びいくつかの気候の極端現象の変化において検出されている(図 SPM.6、表 SPM.1 を参照)。人為的影響に関するこの証拠は、第 4 次評価報告書以降増加し続けている。人間による影響が20 世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い。
E. 将来の世界及び地域における気候変動 温室効果ガスの継続的な排出は、更なる温暖化と気候システム全ての要素の変化をもたらすだろう。気候変動を抑制するには、温室効果ガス排出量の大幅かつ持続的な削減が必要であろう。
E.1 大気:気温 21 世紀末における世界平均地上気温の変化は、RCP2.6 シナリオを除く全ての RCP シナリオで 1850年から 1900 年の平均に対して 1.5℃を上回る可能性が高い。RCP6.0 シナリオと RCP8.5 シナリオでは 2℃を上回る可能性が高く、RCP4.5 シナリオではどちらかと言えば 2℃を上回る。RCP2.6 シナリオを除く全ての RCP シナリオにおいて、気温上昇は 2100 年を越えて持続するだろう。気温上昇は年々から十年規模の変動性を示し続け、地域的に一様ではないだろう(図 SPM.7、図 SPM.8 を参照)。
E.2 大気:水循環 21 世紀にわたる温暖化に対する世界の水循環の変化は一様ではないだろう。地域的な例外はあるかもしれないが、湿潤地域と乾燥地域、湿潤な季節と乾燥した季節の間での降水量の差が増加するだろう(図 SPM.8 を参照)。
E.3 大気:大気質  
E.4 海洋 21 世紀の間、世界全体で海洋は昇温し続けるであろう。熱は海面から海洋深層に広がり、海洋循環に影響するであろう。
E.5 雪氷圈 21 世紀の間、世界平均地上気温の上昇とともに、北極域の海氷面積が縮小し厚さが薄くなり続けること、また北半球の春季の積雪面積が減少することの可能性は非常に高い。世界規模で氷河の体積は更に減少するだろう。
E.6 海面水位 21 世紀の間、世界平均海面水位は上昇を続けるだろう(図 SPM.9 を参照)。海洋の温暖化が強まることと、氷河と氷床の質量損失が増加することにより、全ての RCP シナリオについて海面水位の上昇率は1971 年から 2010 年の期間に観測された上昇率を超える可能性が非常に高い。
E.7 炭素とその他の生物地球化学循環 気候変動は、大気中の二酸化炭素の増加を更に促進するような形で炭素循環過程に影響を与えるであろう(高い確信度)。海洋の更なる炭素吸収により、海洋酸性化が進行するであろう。
E.8 気候の安定化、気候変動の不可避性と、気候変動の不可逆性 二酸化炭素の累積排出量によって、21 世紀後半及びその後の世界平均の地表面の温暖化の大部分が決定づけられる(図 SPM.10 を参照)。気候変動の特徴の大部分は、たとえ二酸化炭素の排出が停止したとしても、何世紀にもわたって持続するだろう。このことは、過去、現在、及び将来の二酸化炭素の排出の結果による、大規模で数世紀にわたる気候変動の不可避性を表している。